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月を見ていた。

おとといは満月で、散歩しながら見る月はとてもきれいで、それなのに君は横にいなくて、あるはずの君の手がそこにはなくて、月がうつるはずの君の目がそこにはなくて、聞こえるはずの君の「きれい…」がなくて。

僕は、ただ、月を見ていた。

- - - - -

髪を切った君はとても可愛くて、僕はそれを伝えたくて、だけど僕にはそれができなくて、「かわいいね」のたった5文字が言えなくて、だって、それは君の。

- - - - -

珍しく君が怒っている。

僕のせいで君が嫌な思いをしている。

僕が女の子と遊んだことに、ではなく、僕と遊んだ女の子に怒っている。

でもやっぱりそれは僕と遊んだことに、ではなく、その不誠実さに怒っている。

「その子のことはよー知らんけど、あんたを馬鹿にしすぎやで。人を嘗めるのもたいがいせいや」

「あんたもあんたや。だいたい優しすぎんねんて」

「元カノかなんかしらんけど、勝手すぎるわ」

しばらくの沈黙のあとに君はつぶやく。


あんたはうちだけ見とればいいのに、まったく。


君が怒っている。

君が怒っているのは、僕が君を好きではないことにではなく、

好きになった人が誰も愛せないことを知っているからなのだと思う。

- - - - -


それでは、来世で会いましょう。

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